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2015/11/10

障害者の「きょうだい」のホンネ|映画「ちづる」上映会にて

11月7日土曜日、Plus-handicapさん主宰のイベント、
ドキュメンタリー映画『ちづる』上映会&トークイベントー障害者と、その家族との向き合い方を考えるーPlus-handicap Theater #1」に、トークゲストとしてお呼びいただきました。

上映会スタート前の時点で既に満席、当日飛び込みの方もいらっしゃったようで、満員御礼なイベントとなりました。

映画「ちづる」は、赤﨑正和さんが、立教大学在学時代の卒業制作として作ったドキュメンタリー映画です。
知的障害と自閉症を併せ持つ、赤﨑さんの妹千鶴さんを取り巻く、赤崎家の日常を垣間見るものです。

実は、私は「ちづる」を鑑賞したのは、今回で2回目で、たまたま当時大学4年生だった私は、立教大学新座キャンパスでの上映会のことを知り、のこのこと足を運びました。
圧倒された気持ちと、言葉に出来ない感想が入り混じり、いわゆる「モヤモヤ」を抱えた状態で帰ったことをよく覚えています。
自分のきょうだいのことを考えているつもりだったけど、考えられていなかった面が、その時に目の前に現れたような気持ちだったのかもしれません。
他の家族のリアルな生活が、想像以上にインパクトがあり、でも憎めないちーちゃんと家族のストーリーが、なんだか微笑ましくも感じました。

後半のトークセッションの冒頭でもお話しましたが、初めて「ちづる」を鑑賞した時、主人公は赤﨑監督自身だなということを率直に感じました。カメラを通して、ちーちゃんへの関わり方が、より近くなっていくように見られて、等身大の自分と重ね合わせてしまいました。
赤﨑さん自身、自分の妹について、周りに話をあまりしないタイプだったからなのか、「どう向けるべきなのか」という葛藤が、前半に見られたように感じていました。その葛藤からのストーリーが、とってもぐっときたのでした。

今回改めて映画を鑑賞してみて、少し観る視点が変わっている自分に気が付きました。今の仕事柄、障害のあるお子さんの保護者の方とお話をする機会を多く頂いているためか、お母さんの視点で物語を追い、赤﨑久美さん(お母さん)の葛藤に、自分も想像力を働かせながら、自分を重ね合わせながら、考えながら鑑賞しました。

左から、プラス・ハンディキャップ代表 佐々木さん、「ちづる」監督 赤﨑さん、わたし

映画を鑑賞したあとから、プラス・ハンディキャップの代表である佐々木一成さんと赤﨑さんと一緒に、障害者が家族にいることをテーマにお話をしました。

まずは映画にまつわることから。
私が「ちづる」で一番好きなシーンは、お母さんと赤﨑さんが喧嘩をするシーン。親の葛藤ときょうだいの葛藤は、似ているようで異なる面が多く、そのお互いの葛藤が対等にぶつかり合うそのシーンは、きょうだいである私からすると、「親も子育てに迷いながら向き合っているのだな」と感じられるのです。
親ときょうだいが、障害のある家族について、それぞれの立場で真剣に向き合えることって、実は意外とないような気がします。
映画が、親子の関係をより深くしたんだなとも感じます。


その後、ご自身も障害者手帳を持つ佐々木さんならではの当事者的目線(あえて「的」と書いています)から、一見ストレートな質問をしてください、ました。
佐々木さんの当事者的に感じる独自の視点と、優しくフランクなお人柄から、私たちも気軽に楽しくお話させていただきました。(特に包み隠すこともないなと思ってお話しました)

きょうだいのことを外に話すということ、きょうだいと自分の「違い」の認知について、家族との生活の有様、さまざまな視点でお話させていただきました。
また、会場のみなさんからもご質問を多くいただきました。時間の関係上、全ての内容に対してお答えすることはできませんでしたが、近いうちに、いただいた質問にブログでお答えできたらなと思っています。

お話の中で強く感じたのは、障害者が家族にいる日常は、決して特異なものではなく、でも現代の人間の生活を語る上では、特異性のある日常なのだということ。
そして、私たち家族は、その特異な日常が、日常すぎて、その感覚をどこまで広く伝えることができ、理解してもらうことができるのか。
その理解が進んだら、もっと誰にとっても生きやすい優しい社会が待っているような気がしました。

今回のトークセッションで、改めてきょうだいの立場独特の共感ポイントを多く実感したと同時に、微妙なところで違いが出てきたりして、自分の立場を相対的に考える機会となりました。

ちなみに、映画を鑑賞していく中で、当日お話しなかったけど強く感じたことがもう1つあったので書き残しておこうと思ったのですが、これは私が自分の家族を撮影するよりも、赤﨑家だからこそ、この映画はダントツおもしろいだろうなと強く感じました。山田家は単純に兄と弟に障害がありますが、2人を1人で追うのはしんどいし、加えて父・母も撮影する負担を想像すると、少しゾッとするというのもありますが(笑)、赤﨑家だからこそ、この映画の価値があるんだなということを実感しました。
赤﨑さんのインタビューでもありましたが、映画を作る段階で、自分の家族に対する葛藤に向き合い、その姿勢が映像に表れ、この映画を心揺さぶる原石なのだと思いました。自分だったら果たしてそこまで家族に対して向き合うことができていただろうか、と帰路で感じたのでした。

ちなみにその後、主催者のみなさんと赤﨑さんとご飯をご一緒したのですが、話題が裏番組的に盛り上がりました。(笑)映画制作の裏話、思春期ならではの様々な悩みなどなど…それはそれは盛り上がりました。内容は秘密!


赤﨑さん、佐々木さん、機会をくれた友人吉本涼くん、どうもありがとうございました!
(吉本くんが終始ニヤニヤしていて、赤﨑さんとの引き合わせに、彼自身が嬉しそうにしてくれていたことが嬉しく、とっても感謝しています!)

<関連書籍>
お母さま久美さんの書籍。映画だけではわからない、幸せな家族のストーリーを知ることができて、おすすめ書籍です。

ちづる- 娘と私の「幸せ」な人生
赤崎 久美
新評論
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<関連記事>

自閉症の妹が、僕に教えてくれたこと。ファインダー越しに写し出される本当の家族の姿とは。

理解出来なくたって、関係することは出来る。障害児と健常児の人間関係づくりから見えてくること。

映画「ちづる」公式ページ

プラスハンディキャップ|赤﨑さんブログ「あにきにっき」