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2012/02/13

【実践報告】「インクルーシブデザインワークショップ:”ために”から”ともに”へ向かうデザイン」が終了しました!


2月6日に「インクルーシブデザインワークショップ:”ために”から”ともに”へ向かうデザイン」というイベントを開催しました。



インクルーシブデザインとは、高齢者や障害のある人など、特別なニーズを抱えるユーザがデザインプロセスに参加することでイノベーションを目指すデザイン手法です。

今回のこの実践は、研究室の先輩である安斎勇樹さんと、京都大学の塩瀬隆之先生、水町衣里さんとの共同研究として行いました。安斎さんのブログで当日のことがわかりやすくレポートされておりますので、当日のことはぜひこちらを読んでいただけたらと思います。
そして、今年の教育工学会(@長崎大学)で、今回のインクルーシブデザインワークショップで何が起こっていたかを発表できたらと思っております。どうぞお楽しみに!



私は何をレポートしようかなと思ったのですが、率直におもしろいなと思ったことをつらつらとお伝えしようと思っています。

インクルーシブデザインワークショップは、塩瀬先生(京都大学)を始め、九州大学の平井康之先生も実践されております。そもそもインクルーシブデザインワークショップも数多く実践されてはいませんが、お二人も西の方なので、意外と東のほうで実践されたことはあまりなかったようで、参加募集をかけたところ、一晩で定員を越えるお申込みをいただきました。さらに今回はリードユーザーさん(今回は見えない方5名)も含め、関東以外の方もいらっしゃったくらいです。これは本当に驚き。そして会場はおかげさまでぎゅうぎゅうでした。(すいません)


さらに驚いたことに、リードユーザーさん5名のうち、3名が盲導犬と一緒にいらっしゃいました。こちらは1名の方のみ盲導犬と一緒に来ることを事前にお知らせいただいていたので、まさか3匹になるとは…!塩瀬先生曰く、「盲導犬は一都道府県に20匹弱だから、3匹も同じ場所に集まるのは盲導犬協会以外では、どえらい珍しい現象」とのこと。そして福武ホールに犬が来るなんてことも初めてなのでは…。定員もかなりギリギリのなかのワークショップで、わんこちゃんたちにも窮屈な思いをさせてしまい申し訳ないなあと思っていたのですが、やっぱり盲導犬は優秀で、ずっとおとなしくしていました。可愛かったなあ。


ワークショップが始まってからのグループワークは、どのグループも活発で、見ているこちらが楽しみました。

今回のテーマは「絆創膏のデザイン」です。絆創膏1つを考えるだけでも実はとても深いのだなと思いました。

まずは行動観察。見える人も自分の絆創膏を使う行為をこれほどに観察して考えたことは無いでしょう。例えば怪我をした時に使いやすいかどうか、こういうものがあったらいいなということを考え、共有します。また、例えば、見えない人にとって、絆創膏の箱が「お菓子の箱なのか、触っているだけでは何の箱なのかわからない」という意見も出たりして、絆創膏一つとっても、いろいろな課題が見つかることがわかります。そしてグループメンバーの意見をまとめ、アイデアを共有します。


次にアイデアを実際に形にします。画用紙や絆創膏の箱、お菓子の箱などを使って、簡単な「試作品もどき」を作ります。プロトタイピングです。

そして最後にプレゼンテーション。演劇形式でプレゼンテーションを実施してくれるグループもあり、思った以上に盛り上がりました。


終了後は懇親会として、お話ししたい人は会場に残ってお話ししてもらうようにしましたが、みなさんなかなか帰らずワークショップ後も盛り上がっていたようでした。



インクルーシブデザインや、こうして目の見えない方を招いてワークショップをすると、なんとなく福祉色の強いように思われますが、デザインプロセスの大部分にユーザを巻き込む特徴的な手法は、クリエイティブなアイデアをデザイナにもたらすだけではなく、デザイナとユーザのあいだに共通言語を生み出す過程でもある(塩瀬ほか 2010)。と言われているように、この「インクルーシブデザイン」はもともと「ユーザー参加型デザイン」の考えに基づいていると考えられます。

これまでは「一般化されたユーザー像」を一方的にイメージし、そこに理想的・合理的な行為が仮定されてプロダクトが生み出されることが多くありました。すると、実在のユーザーが選択する行為との間に開きが生まれます。理想的なユーザー像を生み出す側が、一方的に頭の中で考え生み出されたプロダクトも、想像していたように使われないという残念なことも起こりうるでしょう。プロダクトを生み出す側にとっても、利用する側にとってもこれは悲しいことで、まさにディスコミュニケーションが生まれていると言っていいのではないかと思います。


こういったことが福祉の場面ではよく指摘されます。例えば点字ブロックもとりあえず設置すればいいという問題ではなく、ユーザーを一方的にイメージした設置によって、逆に事故を起こす原因にもなったりします。これでは本末転倒です。

そもそも「ユニバーサルデザイン(UD)」と「インクルーシブデザイン」の違いは何なのかということをよく尋ねられるのですが、その違いを体感できるのが、このインクルーシブデザインワークショップです。ユニバーサルデザインは、まさにある理想のユーザー層に向けてのデザインと言えます。実際に使う人との対話がないまま、一方的にデザインされたものが多かったのかもしれません。インクルーシブデザインが「ポストユニバーサルデザイン」と言われるように、デザインそのものの考え方も変化してきていると言えるのではないでしょうか。

ニーズを表現する『言葉』は、ユーザーがあらかじめもっているものでもなければ、デザイナやエンジニアの専門用語から誘導された言葉でもない(塩瀬ほか 2010)という指摘の通り、ユーザーのニーズはそれぞれ異なります。その言葉をまず共有することが、「ユーザー参加型デザイン」であり「インクルーシブデザイン」なのでしょう。

今回実施してみて、グループでのディスカッションも揺さぶられているようで非常に面白く、絆創膏のアイデアも様々でした。クリエイティブなアイデアを生み出す手法であることはもちろん、デザイナーとユーザーの間の共通言語を生み出す可能性を示してくれたように感じました。

そういう意味でも、今回のワークショップは安斎さんが研究テーマとしている創造性や創発的コラボレーションと、私の研究テーマであるインクルーシブ教育(実践)を足して2で割ったようなワークショップでした。



参加していただいたみなさんには、塩瀬先生の「おもろいファシリテーション」も体感できたことと思います!笑いが絶えずとても良い雰囲気で行なうことができたことが何より嬉しかったです。ご参加いただいたみなさま、ほんとうにありがとうございました!

*参考文献
塩瀬隆之, 鍵山康尋, 小林大祐, 水町衣里, 川上浩司(2010)インクルーシブデザインによる観光コンテンツの開発. 人工知能学会全国大会論文集(24).

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