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2011/10/09

『共感するイノベーション インクルーシブデザイン -10年の歩み』展 に行ってきた


見に行ってきたもの報告。

『共感するイノベーション インクルーシブデザイン -10年の歩み』展
に行ってきました。


主催:インクルーシブデザイン研究所 http://www.inclusive-d.net/




■ インクルーシブデザインとは
これまでデザインのメインターゲットから除外(エクスクルード: exclude)されてきた人々を、積極的にデザインプロセスの上流工程へ包含(インクルード: include)し、かつ、ビジネスとして成り立つデザインを目指す考え方です。 
ユニバーサルデザインが、障害者や高齢者に標準をあわせながら、全ての人にとって利用可能な、製品や環境を想定しているのに対し、インクルーシブデザインは、年齢、ジェンダー、障がいに関係なく、すべての人々を含むデザインのプロセスとして区別されます。

と、HPからの引用なのですが、こうあるように、「インクルーシブデザイン」は「ユニバーサルデザイン」と区別するように生まれてきた概念です。
障害のあるとかないとかいう以前に、世の中には「あらゆる人たち」がいて、どんな人にも使いやすいデザインを考えるというもの。

なぜかへるめ( @herume) と フナエくん(@i_ship_pro)と行ってきた。
というわけで忘れないうちに感想を。



■インクルーシブデザインの中にあるアイデアの可能性

先日のワークショップを思い出させるようなアイデアがたくさんありました。
*この2つは先日の8月の授業でのミニワーク中にアイデアとして出てきたものにとても近くてびっくりした。見に行ってみてくださいな。
・牛乳パックのデザイン「ミルクマン」
「ホースは折れると水が流れてこない」という発想から生まれたもの。
・植木鉢?の側面が鏡になっていて、周りの景色がそれに写るという金属のデザイン

あと他にも面白いなと思ったのでメモ。
・ボタンを選べるリモコン
レゴみたいに組み立てられそうで、使うだけで楽しそう!
・見えない人でも服の色の違いをみわけるためのタグ
そのタグを別の機械が読み取ってくれるもの。(だったはず)
・手の力が入りづらい人のためのなべの取っ手のデザイン
これ、普通に子どもも使いやすいし可愛かった。
・片手でつけられる絆創膏
・黒板型のデザインのタブレット
チョークみたいなペンで、文字を書くとその線もチョークみたいになっていて、データはケータイとやりとり可能となっている。

誰にでも使えそうかつ見た目がかっこいい・かわいくて見ていて楽しい。
あと、どんな企業が関わってやっているのかというのもおもしろいと思います。
タダだし、デザインとか好きな人は行ってみるといいと思います。


■インクルーシブデザインは触ってわかるもの。

「10年の歩み」という訳で、これまでデザインされてきたものが年代に沿って説明するように並べられています。

とはいえ、歴史をたどっているだけの印象を持ったので、ちょっともったいなかったなぁと思いました。
へるめもフナエくんが「(モノができあがる)プロセスもっと見たかったなぁ」と言っていたのも印象的だったのだけど、多分それは、展示が歴史をたどっているにとどまっている(印象だっただけなのかもしれないけど)からなのかも、と思いました。

インクルーシブデザインされたプロダクトが実際展示されているのですが、実際に触ることができないのも残念。
なんで触っちゃいけないのかわからないのですが(不完全なものだったのかな?)
でも、こういう展示は手にとって見るからこそ「良さ」というものはわかる気がします。

あと、PCに映像が流れていたのですが、音声が聞こえにくいのがちょっと残念。
インクルーシブの展示をするなら、PCのほうも、うまく字幕つけたりとか、なんかできたよなぁと思ってしまいました。うぬぬ。


■インクルーシブデザインによる、コミュニケーションデザイン

こうして「これいいよね」「あれおもしろいよね」「これ使ってみたい」と思わせるデザインプロダクトってのは、もしかしたらこういう「 」から始まるコミュニケーションの、そもそものキッカケを生み出しているのかもなぁと感じました。

それに、これらのデザインが、例えば見えない人、手が不自由な人の役に「」立ったりするのだろうけど、このデザインが全てそういう人たちのことを100%サポートしてくれるわけではない。結局そこにはリアルに人が関わる必要はある。なぜなら絶対に番人のためのデザインなんて、ありえないから。
デザインで全てが解決できるのなら、世の中の問題は全て解決できるってことなのだと思いますしね。

誰しも誰かに手を貸してもらったり、そもそもモノを楽しく使う中で生まれる会話もあったりする。
福祉の側面から言うと「誰かのために」しなきゃという気持ちが働いてしまう。「支援しなきゃ」の気持ちが先に働くような相手の見方はしたくないなぁと思うのです。
一緒に使って、「これいいね」って楽しみながら使いたい。
そのキッカケとなりうるモノ。
楽しいコミュニケーションを生み出す、インクルーシブデザインプロダクトなのかもしれないです。

ちなみに「も」言ったのは、このデザインは『ともに』のデザインだからです。

インクルーシブデザイン、よかったらぜひ見に行ってください!*

★おまけ
BLACOWS、前からめっちゃ気になってたバーガー屋さんだったので、念願叶ってきました♪高いけど!
バーガー屋食べ歩きしてたの懐かしいなぁ。誰か行きましょう!


2011/10/08

Summer Study Tour 2011(1)−Communication Design

先日から後期がスタートしました。
日本女子大学時代は「前期・後期」と読んでいたけれど、東大に来てから「夏学期・冬学期」という言い方をするのですが、まだ馴染めず、未だに後期と言ってしまうあたり、まだまだ在学意識が低いです。笑

夏休みはいろいろな現場を見せてもらいました。研究者の卵としての濃い夏休みだった気がします。


●8月
*京都出張1
1〜3日:京都大学塩瀬隆之先生のインクルーシブデザインワークショップの集中講義@京都精華大学
4日:大川センター見学
5日:たんぽぽの家の見学 http://popo.or.jp/
7日:京都総合博物館にて「夏休み体験EXPO2011 夏」:触った印象を絵に描いてみよう!ワークショップの見学

7月30日〜8月13日はSoclaの期間だったため、Facebookとにらめっこ。
17日:EduceCafe
25日:コクヨさんに、白梅学園大学のワークショップ実践について伺う

●9月
(8月31日)〜9月2日:京都出張その2
3日:BEATセミナー
6日:経営学習論(中原先生)最終発表会
9日:CAMP10周年パーティー参加
10日:ファッションコラージュワークショップ実践
13日:学校現場見学
17〜19日:日本教育工学会@首都大学東京
26〜28日:ALT夏合宿@軽井沢
30日:研究法Ⅲ(山内先生・水越先生)ワークショップ実践報告会


8月上旬の京都の旅は、基本的にひとり。
舘野さんが「日常を異化する」とご自身のブログで書いてあったけど
本当にそうで、日常と非日常の境目をうろうろしている1週間でした。


今回の記事は、京都出張1について。
その中の、塩瀬隆之先生による、京都精華大学での授業見学(というよりも参加)について更新します。



●京都精華大学*創造領域特論2

塩瀬先生に呼んでいただいた授業。早朝塩瀬先生と国際会館駅で待ち合わせ。

京都精華大学はとってもスタイリッシュな大学。
はっきり言って美大。






基本的に建物はスタイリッシュ。
学生課や教務課が一緒のフロアになっていたのにはびっくり。
そしてその大学職員さんのフロアだけでなく、ラウンジなどの主要な部屋はガラス張りでした。


階段も青とかピンクの壁になっていてかっこ良かった。
ここのフォントも個性的でした。アップで写真撮るのを忘れてしまったことが悔やまれますが…



















左の写真が食堂で撮ったもの。美術系の大学らしいサークルやイベントのフライヤーなどが

壁にたくさん貼られていました。


右の写真が食堂の上にあるカフェ。
隣にFamily Martもあります。
ちなみに左の後ろ姿が塩瀬先生。笑

実はこの日、オープンキャンパスで
キャンパス内は高校生らしき子がたくさん来ていました。
そのためかとても賑やかで
学生スタッフや職員さんがおそろいのTシャツを来ていました。



さて、創造領域特論2という授業。大学院生向けの授業です。
サブタイトルが「コミュニケーションデザイン」という名の通り、
塩瀬先生は、「コミュニケーション」というものを様々な角度から考えさせていくような授業を展開します。


1日目は基本的に講義が主。「コミュニケーションデザインとは何か」ということを、様々な切り口で考えていきます。
とはいえ朝から夕方までずっと座っているわけではなく、ミニワークを入れながら講義を進めていきました。
塩瀬先生の「コミュニケーションデザイン論」の話や、創造的なディスカッションをするためのワーク、そこにまつわるちょっとした理論や、具体的な手法を、手を動かし頭を動かし、しゃべりながら進めていきます。


2日目がこの講義のメイン。
見えない学生さんが3名来ていて(みんな大学生)、彼らをグループに巻き込んでワークショップ。
いわゆる「インクルーシブデザインワークショップ」に参加。
このワークショップでは、基本的に「ユーザをデザインプロセスに巻き込むこと」が目的です。
しかし、「ユーザー」といえども多様なユーザーがいる。
ここでは「3人の見えない人」と「私たち大学院生」もユーザーであるという前提でアイデアを考えていきます。


今回のテーマは「記憶法・発想法」
記憶すること、アイデアの発想を支援するようなものをカンガエルということが、今回のワークショップの目的です。



メンバーが揃った後、目の見えないユーザーへのインタビューを中心に、アイデアをみんなで考えていきます。
塩瀬先生は基本的にブレインストーミングをするよう促します。この3日間でたくさんのポストイットを使いました。

そのあと、プロトタイピングを行い、演劇のような形でプレゼンテーションを行なって終了です。


プレゼンは、急遽大学の職員さんに来てもらい、そこで順位付けをしてもらいました。
私たちの班で考えたアイデアは「PicNavi」という携帯電話のサービス。

同じ班の、見えないHくんは、iPhoneなどのスマートフォンの利用は困難という話をしてくれました。
いわゆる「ガラケー」のボタンのほうが、どこになんのボタンがあるか、手で触ってわかるから。
どのボタンを押したのか、どんな変換ができるのかは、音声を聞けるように設定してあるので、見えない人にとってはガラケーのほうが「スマート」だということが判明しました。
実際に見える私達も、ガラケーが特別不便というわけではない。

その後、私たちは「記憶する」ということとガラケーの利便性を考え、
ケータイのナビ機能に注目して考えていくことになりました。

ちなみにPicNaviの機能について簡単に説明すると…
街中に出たとき、セカイカメラの要領で目的地までを案内してくれる。
ケータイが人間の存在をリアルタイムで感知するので、人混みも歩ける。

音声は街中の音とケータイの音が両方聞けるよう、骨振動で伝える。

実際にリアルタイムのナビゲートは見える人にとっても便利である。見えない人がこれをを使って道を聞いてきても、見えない人が意図している情報がケータイの画面に映っているため、コミュニケーションの媒体にもなる。それぞれにも便利だし、繋ぐこともできる、というもの。


ちなみにこのアイデアは、3チームの中で1番の評価をいただきました。
でも、私達が伝えたかった「誰にでも使える」という部分が上手に伝わりませんでした。
プレゼンの時「見えない人にとって便利」という風に伝わってしまったことが問題だったという話になります。


3日目は、2日目の実践の評価をし、
バリアフリーデザイン、ユニバーサルデザインとの違いについて考えたり、メジャーからマイナーまで様々なユーザの声をデザイン活動に反映させる創造的ディスカッションの手法を体験したりし、ミニワーク多めの授業となりました。
コミュニケーションデザインやインクルーシブデザインワークショップなどを「Creativity 創造性」という概念にまで広げて考えていき、3日間の集中講義が終わりました。


今回の授業では、
「社会問題を解決できるようなコミュニケーションデザインを自ら起案する具体的方法を習得できる。」
というインクルーシブデザインワークショップの可能性について体得できたことなのではと感じています。

インクルーシブデザインワークショップについてもう少し触れると「生気がなくなるほど頭を使った」というものが、正直な感想です。

見えない人と関わったことがないわけではないですが、ワークショップで関わったからこそ見える、「咬み合わないこと」を身体で感じられたことが、今回のワークショップの魅力の1つなのかなと思います。
ましてや、京都精華大学にもアジアの留学生が多く、今回も4分の1くらいは中国・韓国などの国籍の学生さんがいました。
例えば顔なじみの人であれば、まだワークを行いやすいと思うのですが、初対面の人とのグループワーク、しかも外国人も含む状態。
学生さん同士、専攻も学年もバラバラのため、意見をすりあわせたり、議論を活発にすることは難しかった。
基本的にグループワークに不慣れな学生さんが概ね多かった印象もありました。

ただ、3日間のワークを経て、最後にはほぼ全員がよく意見を言っていたように見えました。
議論が明らかに活発になっていき、楽しそうに関わっていく姿が見受けられました。
また、意外と人との繋がりが生まれた3日間でもありました。

そして、この授業そのものが「インクルーシブデザインワークショップ」だったように思います。
これから「さまざまなバックグラウンドを持つ人とのコミュニケーションデザイン」を考えていく必要性も感じたので、このワークショップの可能性は大きいなと思います。



こうして「かみかわないこと」をかみあわせるような「1つのアイデア」に落としこむことって、想像以上に難しい。
これ1つでかなり楽しいのですが、工夫しがいのあるワークショップだと思います。
わたしもこの手法をもっとアレンジして、自分なりに実践をやってみたいなと感じています。

そもそも見えない人とのコミュニケーションをこれほど意識することはなかったなと、振り返ってみて感じています。

想像だけじゃわからない、話を聴くだけじゃわからない。
「車椅子を日常生活で使っている人はきっとこうしたら便利『だろう』な」
「見えない人にはこうしたほうがいい『だろう』な」
というデザインが、街中には溢れているんですね。

これは障害のある人に限らず、直接人(ここではユーザー)と関わることで、「本当に『これを使う相手』を知る」ことがスタートとなり、デザインをしていく。
それが「ユニバーサルデザイン」でなく「インクルーシブデザイン」であり、求められていくものなのでしょうね。

最後に、塩瀬先生が散々おっしゃっていた「アイデアをだす3つのポイント」について記しておきます。
この詳しい話は、またいつか。

・ブルースカイ:限界を考えない状態で考える
・マルチプルシナリオ:いろんな文脈でひろっていく→ユーザーを広げる
・クイック&ダーティー:汚くていいから(プロトタイプを)速く作る!

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